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「やり切った」省エネに、まだ見えていない盲点があります

2026/6/19

Carbon Neutral Blog

前回の記事では、「省エネに取り組んでいるのに電気代が下がらない」背景に、エネルギー単価の構造的な高騰があるというお話をしました。では、使用量の削減という面ではどうでしょうか。

「LED化は済ませた」「空調の設定温度も管理している」「こまめな消灯も徹底している」──そこまでやっていれば、もう省エネでできることはないのでしょうか。

実は、「やり切った」と感じている企業ほど、まだ気づいていないエネルギーロスを抱えていることがあります。今回は、現場の感覚だけでは見えにくい "省エネの盲点" について、いくつかご紹介したいと思います。

目次

図1:工場の電気代の構成と「5つの盲点」のマッピング

盲点① ── 契約電力が「過去のピーク」に引きずられている

工場の電気料金は「基本料金+電力量料金」で構成され、このうち基本料金は「契約電力 × 基本料金単価」で決まります。そして多くの高圧契約では、過去1年間に記録した30分ごとの最大需要電力(デマンド値)が、そのまま契約電力になる「実量制」が採用されています(仕組みの詳細は第1回をご参照ください)。

ここで盲点になりやすいのが、この契約電力が「過去のピーク」に引きずられ続けるという点です。日頃どれだけ節電を頑張っていても、夏場のある日の午後に設備が重なって動いた30分間のせいで、その後1年間の基本料金が上がってしまう──これは意外と多くの工場で見られる現象です。

しかし、デマンド値を日常的に監視している中小企業は決して多くありません。「使用量は減っているのに基本料金が変わらない」という不思議な現象の裏に、この仕組みが隠れていることがあります。

盲点② ── 電力契約の料金メニューが実態に合っていない

電力会社の法人向け契約には、複数の料金メニューが用意されています。時間帯別に単価が変わるプラン、季節によって料金体系が異なるプランなど、さまざまな選択肢があります。

しかし、契約を結んだ当時と現在では、工場の稼働パターンが変わっていることも珍しくありません。たとえば、生産ラインの増設や稼働時間の変更があったにもかかわらず、契約メニューが昔のままになっている。そのために、自社の電力の使い方に合わないプランで割高な電気代を払い続けているケースがあります。

料金メニューの見直しは、設備投資も工事も不要で、手続きだけでコストが下がる可能性がある施策です。ただ、自社にとってどのプランが最適なのかを判断するには、時間帯別・季節別の使用データを分析する必要があり、「何となく今のままで」と放置されやすい領域でもあります。

盲点③ ── 「力率」という見落とされがちな割引制度

電気料金の明細をよく見ると、「力率割引」という項目が記載されていることがあります。力率とは、供給された電力のうち実際に仕事に使われた割合を示す指標です。

高圧契約では、力率が85%を基準に、1%上回るごとに基本料金が1%割引されます。力率100%なら15%割引です。逆に85%を下回ると、1%ごとに基本料金が1%割増になります。

力率の改善には「進相コンデンサ」と呼ばれる装置の設置が有効で、こうした対策を取り入れる選択肢もあります。導入にあたっては設備費用や設置工事に加え、定期点検・更新といった維持管理も必要になるため、費用対効果を踏まえて検討するとよいでしょう。とはいえ、力率という概念自体があまり知られていないため、そもそも自社の力率が何%なのかを把握していない企業も少なくありません。毎月の電気代を見直す際に、真っ先に確認しておきたいポイントのひとつです。

図2:力率割引制度の仕組み

盲点④ ── 稼働していない時間帯の「待機電力」

工場の生産ラインが止まっている夜間や休日にも、意外と多くの電力が消費されています。空調のファン、コンプレッサー、搬送設備の制御盤、さらには事務所の複合機やサーバーなど、稼働していないのに電源が入ったままの設備は想像以上に多いものです。

一つ一つはわずかな電力でも、稼働していない時間帯に何時間も積み重なると、年間で見れば決して小さくない金額になっているケースも少なくありません。「電気を使っている」という実感がないだけに、ここは盲点になりがちです。

こうした待機電力のロスは、設備ごとの電力使用量を計測して「見える化」しないと、なかなか把握できません。「工場全体の月間使用量」だけを見ていては、どこに無駄があるのかが分からないのです。

盲点⑤ ── 省エネの「属人化」と「形骸化」

省エネ活動を始めた当初は、担当者が熱心に推進し、現場の意識も高かった。しかし、数年たつうちに担当者が異動し、活動のノウハウが引き継がれず、ルールだけが形だけ残っている──。こうした「省エネの形骸化」も、見えにくいロスのひとつです。

たとえば、「空調は28度設定」というルールがあっても、実際には現場判断で25度に下げられていたり、「不要な照明は消す」というルールが守られなくなっていたりすることは珍しくありません。ルールがあること自体が省エネの達成感につながり、実態との乖離に気づきにくくなるという皮肉な構図が生まれます。

省エネは「やった」で終わりではなく、「やり続ける」仕組みを作ることが大切です。そのためには、定期的にデータで実態を確認し、ルールの実効性を検証するプロセスが求められます。

「見えていないロス」を見つけるには

ここまで挙げた盲点に共通するのは、「日常の感覚や月次の電力明細だけでは気づけない」という点です。デマンド値、力率、時間帯別の消費パターン、設備ごとの待機電力──これらは、エネルギー使用量を計測・分析して初めて数字として見えてくるものです。

こうした"隠れたロス"を可視化するための手法が 「省エネ診断」です。次回の記事では、省エネ診断とは具体的に何をするのか、どんなロスが見つかるのかについて、もう少し詳しくお伝えしたいと思います。


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