
会社を作りたいという思いは、以前から自分の中にありました。会社を作る人には、程度の差こそあれ、世の中を変えたいという願望があるのではないかと思います。
もう少し具体的に話すと、私はもともとエネルギー業界向けのコンサルタントとして長く働いており、前職では世界中の情報を集め、お客様にトランスフォーメーションを提案する立場にありました。当然、海外のエネルギー会社は早い段階から「脱炭素」をテーマに掲げ始めており、先進的な企業ほどその動きが顕著でした。
アークエルの創業は2018年ですが、その少し前の2010年代半ばは、アル・ゴアの『不都合な真実』(2006年)やパリ協定(2015年)をきっかけに、世界全体で気候変動への危機感が高まっていた時期でもありました。
そうした中で、日本のエネルギー会社になかなかイノベーションが起きないと感じていました。ヨーロッパやアメリカに実際に足を運び、これからはカーボンニュートラルの時代だ、デジタルの時代だという最新の情報を持ち帰って紹介して回りましたが、なかなか変わりませんでした。大きな会社は慣性が効いてしまい、簡単には止まれません。方向を変えるには時間がかかるのだと実感しました。
海外、特にフランスやイギリス、スペイン、イタリア、ドイツなどの大きなエネルギー会社がどのように変革を進めていたかというと、スタートアップとの提携でした。自力で変わることが難しい大企業が、スタートアップのイノベーションをうまく取り込みながら変わっていく。そうした姿を目の当たりにしていました。
そのままコンサルタントとして大企業の変革を支援する道もありましたが、もともと自分の会社を作りたいという思いもあり、「変える側」、変わるきっかけを作る側であるスタートアップの立場に立って、日本のエネルギー・脱炭素領域に貢献しようと考えました。それがアークエルを立ち上げた理由です。

大切にしたいことは、大きく2つあります。
クリーンなエネルギーを誰もが選べ、有効活用できる。そうした仕組みを社会に導入していきたいと考えています。ただし、ITやデジタルというだけでは、それは普及しません。結局はエネルギー価格の問題です。
私は大学院で金融工学を専攻し、電力市場の研究をしていましたが、クリーンエネルギーは本来安いものです。それが安く提供されていないのは、「仕組み」に問題があるからです。余剰エネルギーや損失分を安く供給する仕組みを、デジタルやAI技術を使って実現できるはずだと考えています。ヨーロッパやアメリカでは、2010年代に、こうした仕組みをデジタルで実現しようとするスタートアップが数多く生まれています。日本でも、そうした仕組みが根づく社会にしていきたいと思っています。
会社を成長させていくうえでも、信頼は欠かせないものだと思っています。目の前の仕事にどう向き合うか、約束を守るか、相手の期待にどのように応えるか。そうした日々の仕事の積み重ねが、少しずつ信頼になっていくものです。
一つひとつの仕事で信頼を積み重ね、その信頼によってまた新しい仕事を任せてもらう。その積み重ねが、会社の成長につながっていく。大きなことを成し遂げようとするなら、まずは目の前の仕事を一つひとつ積み重ねていくしかない。私はそう思っています。
クリーンなエネルギーを誰もが選べ、有効活用できる社会をつくること。そして、その実現を任せてもらえるだけの信頼を、一つひとつ積み重ねていくこと。その両方を大切にしながら、これからのアークエルをつくっていきたいと思っています。
