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電力会社 Mercury NZ LimitedのEV移行

2026/9/11

EV Blog

目次

電力会社 Mercury NZ LimitedのEV移行

前回のEVブログで取り上げた航空会社 Air New Zealandの共同宣言に賛同したのは、電力会社 Mercury NZ Limitedと金融機関 Westpac NZです。この2社は共同宣言をきっかけにEV移行を加速させました。

Air New Zealandの挑戦:ニュージーランドから世界へ発信する、航空会社のEV移行

Air New Zealandが起点となった脱炭素の連鎖が、電力会社と金融機関へと広がっていった様子は、ニュージーランドにおける企業間連携によるEV普及モデルの好例といえます。今回はまず、電力会社 Mercuryがどのような視点でEV移行を進めたのかを紹介します。

Mercury NZ Limited:電力会社のEV移行

2018年、アメリカ製クラシックカーの象徴ともいえる1957年型のFord Fairlaneが、ニュージーランドでEVコンバージョン車両「Evie」として生まれ変わりました。ガソリンエンジンと排気管が取り払われ、代わりにドイツ Siemens製 電気モーターと50kWhバッテリーパックが搭載されました。

Mercuryは、EV普及と自社のブランディングを目的として、2018年からニュージーランド全土をEvieで走行させ、EvieはやがてMercury NZのブランドシンボルとなりました。

出典:Mercury NZ Limited HP

Mercury NZ Limited

  • ニュージーランド・オークランドを本拠とする電力会社で、発電と小売事業を展開。前身は Mighty River Power Limited で、2016年7月に社名をMercury NZ Limitedに変更。

  • 同社の発電は、水力・地熱・風力による100%再生可能エネルギーで構成。ワイカト川沿いの9基の水力発電所、北島中央部の5基の地熱発電所、複数の風力発電所を運営。総発電容量は約2,155MW(水力1,096MW、地熱475MW、風力584MW)。

  • 小売事業では「Mercury」「GLOBUG」ブランドを通じて、電力・ガス・ブロードバンド・モバイル通信サービスを家庭・中小企業・産業顧客に提供。

2014年:社用車EV化の出発点

Mercuryの社用車EV化は、2014年にまで遡ります。同社の年次株主総会で、当時のCEO Fraser Whineray氏が「EV化できる車両はすべてEV化する」という方針を表明したことがきっかけでした。具体的な目標年は2019年でしたが、Mercuryはこれを2年前倒しの2017年に達成しました。

114台の車両のうち80台がBEVまたはPHEVとなり、残りの34台は遠隔地やオフロード業務専用です。地熱発電所への山岳アクセスや電力インフラ保守のための未舗装路走行など、当時のEVでは代替が物理的に不可能な業務が、ニュージーランド北島中央部の地形には存在していました。

  • BEV

出典:BMW HP、日産自動車 HP

  • PHEV

出典:三菱自動車工業 HP、EV Central、AUDI HP

また、Mercuryは社用車のEV移行と同時並行で充電インフラを全社的に整備しました。オークランド・ニューマーケットの本社ビル地下には12基の普通充電器を設置し、北島中央部の地熱と水力の発電拠点を含む全拠点合計で93基の普通充電器を配備しました。充電インフラへの先行投資があったからこそ、約870名の社員が20拠点で社用車EVを利用できる環境が整いました。

「30社・30%」:他社を巻き込んだコーポレートEV宣言

Mercuryの功績は、社用車のEV化にとどまりません。2016年、Air New ZealandやWestpac銀行とともに策定した30% EV Committers Pledgeは、当時のニュージーランドEV市場そのものを変えました。

  • 30% EV Committers Pledge:30社以上のニュージーランド企業が「2019年末までに社用車の30%以上をEV化する」と誓約する枠組み

2016年当時、ニュージーランド国内のEV登録台数はわずか約2,000台でした。「30% EV Committers Pledge」の目標は、「現在の2倍以上の社用車のEV化を達成し、社用車としてのEVを"普通の選択肢"として定着させること」でした。3年後の2019年末、ほぼすべての参加企業が数値目標を達成し、登録EV台数は17,562台まで急増しました。MercuryのCEO Whineray氏は、「『30% EV Committers Pledge』に参加した30社の枠を超えて、多くの企業が自発的に社用車のEV移行を進め始めた。この影響力が市場全体に広がったことこそ最大の成果だ」と振り返っています。

「走る広告塔」としての社用車EVブランディング

Mercuryの社用車EV戦略で際立っているのは、ブランディングへの徹底的なこだわりです。全ての社用車EVの車体には、「ニュージーランドの再生可能エネルギーで走行しています」というメッセージと同社のシンボルマーク(ハチ)がラッピングされています。

出典:Mercury NZ Limited SNS

MercuryのCMO Julia Jack氏はブランディングのポイントを説明しました。

  • 可視性こそが普及の鍵です。私たちの鮮やかなブランドカラーとロゴは見過ごされません。それこそが私たちのすべてを体現しています。

  • 社員自身が、社用車EV体験の"最初のユーザー"でもあります。多くの社員は業務でEVを初めて運転し、その体験を家族・友人に口コミで伝えました。なかには個人用にBEVを購入した社員も複数出てきた、という好循環が生まれました。

  • 私たちの最高のアドバイザーは、自社の社員たちです。

2020年:社用車EVから「EV体験プラットフォーム」へ

2020年12月、MercuryはさらなるEV戦略を発表しました。その内容は、社員向け社用車の枠を超えて、一般顧客向けEVサブスクリプションサービス「Mercury Drive」へ600万ニュージーランドドル(約4.5億円)を追加投資するというものでした。月50台ペースでEVを追加し、最終的には450台規模のサブスクリプションEVを構築する計画です。450台規模を達成すれば、これは当時のニュージーランドの登録車両数(約23,500台)の約2%に相当する規模になります。

このサービスは、まとまった頭金を必要とせず、個人がEVを月単位でサブスクリプションできる仕組みです。「EVを買う前に試したい」という心理的ハードルを取り除くことで、ニュージーランド全体のEV化に貢献しています。Mercuryの社用車EV化は、自社の脱炭素化にとどまらず、ニュージーランド全体のEV移行を後押しする取り組みへと発展しました。

「エネルギーを供給する側」から広がるEV普及モデル

Mercuryの歩みを振り返ると、社用車のEV化を出発点に、充電インフラの整備、業界を巻き込んだ数値目標の設定、そして一般顧客向けサービスの展開へと、脱炭素の裾野を着実に広げてきたことがわかります。電力会社という「エネルギーを供給する側」だからこそ描けるEV普及のシナリオは、業種を問わず大きな示唆を与えてくれます。

次回は、同じく「30% EV Committers Pledge」に名を連ねた金融機関 Westpac NZの取り組みを紹介します。エネルギー企業とは異なる立場から、Westpacがどのようにして社用車のEV移行を進め、金融というフィールドでEV普及を後押ししていったのか、その視点に注目していきます。

【弊社事例】日本における社用車へのEV導入事例

アークエル株式会社では、社用車のEV移行に向けて

  • 移行シミュレーション

  • EV車両・充電器導入

  • 電気工事

  • 補助金支援

  • 充電最適化

まで、包括的なサポートを提供し、導入から運用まで一貫してご支援します。

岡山ガス株式会社は、今後のEVビジネスへの展開を見据え、2023年に三菱オートリース株式会社およびアークエル株式会社との3社による協業プロジェクトを開始しました。

岡山ガス × 三菱オートリース × アークエルテクノロジーズ EV導入ワンストップサービス事業を開始 - 3社の強みを活かした協業事業 -

この3社協業事業の中で、岡山ガス株式会社では社用車のEV化にも取り組んでいます。

課題:「日々の事業運用に支障の出ないようなEVスマート充電」と「特定の社用車は充電の開始と停止を自由に実施するが充電時間や充電量kWhは個別に把握したい」という2つのニーズの同時達成

社用車の中には使用目的によって、充電時間帯を一律に設定できない車両も存在します。そうした車両では、自由な充電時間の確保と充電管理の両立が求められるため、EVスマート充電の対象車両とは異なる充電制御が必要となりました。

解決策:充電器ごとに充電制御の内容を分割。「AAKEL eFleet」と「AAKEL eFleet Billing」を充電器ごとに設定

  • 「日々の事業運用に支障の出ないようなEVスマート充電」は「AAKEL eFleet」で提供

  • 「特定の社用車は充電の開始と停止を自由に実施するが充電時間や充電量kWhは個別に把握したい」は「AAKEL eFleet Billing」で提供

充電器ごとに設定機能を変えて提供することで、1拠点内の複数充電器であっても、異なる制御と管理をすることが可能となります。

この「AAKEL eFleet Billing」は公共充電(一般的な目的地充電や経路充電)のサービスではないため、

  • 従業員への福利厚生としての充電サービス提供

  • 既存顧客訪問者への充電サービス提供

  • 既存取引先訪問者への充電サービス提供

このような細かいニーズにも対応することが可能です。

「AAKEL eFleet ver.1.1 」リリース ~eFleet Billing の提供開始〜 EV充電料金を計算し、サービス事業者に提供

また、車両データを活用したスマート充電で、物流現場の脱炭素化と運用コスト最適化を支援するため、トナミ運輸株式会社の相模支店にAAKEL eFleetの提供を開始しました。

トナミ運輸 相模支店にEVスマート充電・運行管理システム「AAKEL eFleet」を提供開始

この取り組みでは、軽EVの動態および充電データを蓄積・活用し、電力市場価格や施設の電力制約を考慮した自動充電制御によって、EV車両全体の運用効率化と電力コスト最適化を目指していきます。

「AAKEL eFleet」は、バス・タクシー・トラック・社用車・営業車などの法人向け基礎充電において、多様な運用ニーズやEV導入・運用に関するさまざまなお困りごとに対応しています。

▶ サービス詳細【AAKEL eFleet

また、アークエル株式会社では、エネルギー会社、自動車関連会社、公共交通事業者、その他の法人に対して、EV関連の新規事業構築支援をご提供してまいりました。

このトータルソリューションとコンサルティングにより、バス・タクシー・トラックなどの商用車から社用車まで、EVに関連する幅広い法人のニーズにお応えしています。

さらに、アークエル株式会社では電力分野に関する豊富な知見を有しており、さまざまな課題に対して最適なソリューションを提案することが可能です。こうした知見と海外ネットワークを活かし、モビリティ領域における調査・コンサルティングサービスを提供しています。

  • 自社の製品・技術が海外のEV市場でどのような事業機会を持つのか知りたい

  • 社内向けに簡潔で分かりやすいEV調査レポートを作成してほしい

  • 日本におけるEV関連の新規事業開発を検討したい

[EV Consultingサービスこちら]

■AAKEL eFleet

アークエルが提供するEVスマート充電サービス「AAKEL eFleet」は、海外製EV(乗用車/商用車)や充電器(ABB社)にも対応するベンダーフリーのソリューションです。API連携や車載器の活用により、メーカーや車種を問わず車両を一元管理できるほか、OCPP・ECHONET Lite・各充電器メーカーの独自仕様にも対応しています。これにより、普通充電器・急速充電器・V2Xなど異なるメーカーや方式の設備が同一拠点に混在しても、支障なく運用できる統合的な充電器管理を実現します。

■EV導入に関するご相談窓口

EV導入やEVスマート充電やEV関連事業に関するお悩み・ご相談がありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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