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Air New Zealandの挑戦:ニュージーランドから世界へ発信する、航空会社のEV移行

2026/8/7

EV Blog

目次

ニュージーランドにおけるEV移行の規制と支援

ニュージーランド政府は、EV(BEVまたはPHEV)普及を後押しするために「クリーンカープログラム」として、需要側と供給側の両方から政策を講じてきました。

需要側:国家部門脱炭素基金(State Sector Decarbonisation Fund)

2019年12月、2億ドル(約220億円)規模の国家部門脱炭素基金(State Sector Decarbonisation Fund) が設立されました。この基金から、警察・社会開発省・住宅公社など複数の政府機関が電動車両の調達と充電設備設置の費用を助成され、2022年時点で同プログラムを通じた累計CO₂削減量は433,981トン(自動車 17,400台相当)を達成しました。

需要側:Carbon Neutral Government Programe(CNGP)

2020年12月、当時の労働党政権は「公共部門を2025年までにカーボンニュートラルにする」というCNGPを発表しました。このプログラムの柱の一つが、政府車両の「EV優先(Electric Vehicles First)」購入義務であり、特別な運用上の理由がない限り、政府機関は車両更新時に必ずEVを選択しなければなりません。

また、このCNGPの中でエネルギー効率・保全局(EECA:Energy Efficiency and Conservation Authority)は、政府機関の公用車両担当者を対象に、車両最適化・充電インフラアセスメント・低排出車両のリース費用の一部補助を提供するフリート・トランジション・プログラムを実施してきました。このプログラムは2023年12月に終了し、EECAは地域ごとのエネルギー・燃料転換支援へと移行しています。

政府は約16,000台の車両を保有しており、2025年末時点で約3,400台(約21%)がEVに移行しています。

需要側:クリーンカー・ディスカウント

2021年に導入された「クリーンカー・ディスカウント(Clean Car Discount:CCD)」は、低排出車両の購入者に還付金を支払い、高排出車両の購入者には課徴金を課す「フィーベート制度」です。新車EVへの還付額は最大NZD 8,625(約80万円)に達し、法人車両も同一条件で申請可能でした。

  • フィーベート(Feebate)制度:環境負荷の高い製品や活動に課金(Fee)し、集めた資金を環境性能の優れたものへ還付(Rebate)する仕組み

この制度は導入後わずか2年で効果が顕在化し、2023年には新車販売におけるEV比率が31.4%まで急拡大しました。しかし、支出が課徴金収入を大幅に上回り財源不足が生じたことから、2023年末に誕生した国民党主導の新政権は、同年12月31日をもってCCDを廃止しました。

供給側:クリーンカー・スタンダード

CCD廃止後も、輸入業者に対して車両のCO₂排出基準を義務付ける「クリーンカー・スタンダード」は継続されています。2025年11月には2025〜2029年の年次CO2目標が改定・設定され、新政府下でも「需要側補助金なし・供給側規制あり」という政策の枠組みが維持されています。

出典:Australasian Fleet Management Associationのデータベースをもとにアークエル株式会社が作成

2026年の市場動向:政策後退を乗り越えた回復基調

2023年12月のCCD廃止と2024年4月からの道路利用者課金(RUC)導入により、ニュージーランドの新車販売におけるEV比率は2023年の31.4%から2025年には10.7%まで落ち込みました。しかし2026年に入り、中東情勢起因の燃料価格高騰を背景に3月の新車販売におけるEV比率は19.8%まで回復しています。

政策補助がなくなった今、総保有コスト(TCO)と燃料価格リスクの低減が、法人車両におけるEV導入の主な経済合理性となっています。

出典:ニュージーランド交通局、およびMotor Industry Associationのデータベースをもとにアークエル株式会社が作成

Air New Zealandの脱炭素への挑戦

陸上車両のEV化

Air New Zealandは、2016年3月、ニュージーランド初となる本格的なEV(BEVまたはPHEV)移行を宣言しました。営業担当者向けの社用車や空港内作業車を含む76台の車両をEVに移行するという計画です。

当時の決断を後押しした最大の理由はコスト優位性でした。EVは化石燃料車と比べて運用コストが約7倍安く、年間65,000リットルの燃料削減が見込まれると試算されました。環境への貢献と事業コスト削減の両立という航空会社らしい合理的な判断でした。

BMW i3(BEV):36台

  • 営業担当者の社用車

  • 2016年のニュージーランド・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した車種

  • 航空機のボーイング787-9ドリームライナーの胴体にも使われるカーボンファイバー強化ポリマーが車体・内装の多くに活用されており、航空会社ならではのこだわりの選択

Renault Kangoo Maxi ZE(BEV):28台

  • 空港内・空港周辺での荷物・機材運搬

  • Air New Zealandがニュージーランドで初めて導入した事業者

  • 最大2.7メートルの長尺物も積載可能で、空港業務の多様なニーズに対応

三菱 アウトランダー(PHEV):12台

  • 長距離移動用

  • 2014年以降、ニュージーランドのPHEV市場を牽引し、同国で最も売れていた電動SUVとしての確かな信頼性と実績が評価されての選定

  • EV航続距離を超えるような遠方への出張や、未舗装路の走行・悪天候時でも安全に移動できるよう、ガソリンエンジンでの発電機能と4WDシステムを組み合わせた仕様で、実用的な航続距離と走破性を確保

充電インフラの整備

EV移行と同時に、Air New Zealandは主要駐車施設に充電インフラを整備しました。すでに顧客向け駐車場に設置していた充電器に加え、社員向け施設への充電設備を大幅に拡充し、通勤・業務に必要な「家・オフィス・空港」の三箇所での充電を可能にしました。

社員への丁寧なEV移行支援も重視され、各EVの充電方法・自宅充電器の安全な使用方法・公共充電ネットワークの活用法について、研修と意識啓発セッションが社員全員に実施されました。

業界全体を巻き込んだリーダーシップ

Air New Zealandは自社のEV移行にとどまらず、2016年10月に電力会社MercuryおよびWestpac銀行と連携し、「3年以内に車両の30%以上をEVに移行する」という共同宣言を発表し、ニュージーランドの主要企業30社以上がこれに賛同しました。(電力会社Mercury、Westpac銀行については次回以降のブログ予定)

MercuryもこれをきっかけにEV100へ参加し、114台の車両のうちEVに転換可能な80台を全てBEVに移行。870名の社員が20拠点でEVを利用するという、ニュージーランド最大規模のEV移行の一つを実現しました。

Air New ZealandのEV移行が単なる社内施策ではなく、ニュージーランド企業のEV移行のきっかけとなった点が、この共同宣言の最大の特徴となっています。

EV100への加盟

2017年11月、Air New Zealandは国際的な環境イニシアチブである「EV100」への加入を正式に宣言しました。これは航空会社としては世界初の快挙であり、同社が推進してきた陸上車両のEV化への取り組みが、世界の持続可能な輸送を牽引するフロントランナーとして認められた瞬間でした。

ドイツのボンで開催されたCOP23(国連気候変動枠組条約締約国会議)の「エネルギー・デー」で発表されたこのコミットメントにより、同社は2030年までに自社の陸上車両を100%EVへ移行するという野心的な目標を国際社会に約束しました。すでに開始していたニュージーランド最大規模の陸上車両のEV化のノウハウを活かし、グローバルな脱炭素化のロールモデルとなることを目指しています。

Air New Zealand:陸上車両のEV化から空のEV化へ

電動「航空機」への挑戦

陸上車両のEV(BEVまたはPHEV)化を先行させたAir New Zealandは、2024年以降、その先を見据えた取り組みを加速させています。Mission NextGen Aircraftプロジェクトとして、米国のBeta Technologies社が開発する電動航空機「ALIA」を発注し、2025年から2026年にかけてニュージーランド国内12空港で100回以上のテスト飛行を実施しました。

現在のプランでは、ALIAを最初にNZ Postとの提携で貨物便として就航させ、将来的にはウェリントン〜ブレナム間の旅客路線での活用を目指しています。Air New Zealandが最終的に約23機の追加発注権を持つこの計画は、「空の電動化」に航空会社として本格的に踏み込む、世界的にも先進的な事例となっています。

画像引用元:Air New Zealand

陸と空をつなぐサステナビリティ

「陸上の車は今すぐに変えられる。空はもう少し時間がかかる。だから先にできることを徹底してやる」この「実行の優先順位」こそが、Air New Zealandを2017年に「世界初のEV100参加航空会社」にした思想です。

EVがそれぞれの街で「Air New Zealand ロゴのラッピング車両で走ること」や「空港の駐車場で無音のEVが荷物を運ぶこと」が、顧客に、取引先に、乗務員に、「Air New Zealandは本気だ」というシグナルを送り続ける広告でもありました。

ニュージーランドのEV市場は政策転換による「2年間の停滞」を経験しつつも、2026年に回復基調へ転換しています。Air New Zealandの10年以上にわたるEV移行の積み重ねは、その回復を「経済合理性」から語るための重要な事例となっています。

【弊社事例】 日本における社用車へのEV導入事例

アークエル株式会社では、社用車のEV移行に向けて

  • 移行シミュレーション

  • EV車両・充電器導入

  • 電気工事

  • 補助金支援

  • 充電最適化

まで、包括的なサポートを提供し、導入から運用まで一貫してご支援します。

岡山ガス株式会社は、今後のEVビジネスへの展開を見据え、2023年に三菱オートリース株式会社およびアークエル株式会社との3社による協業プロジェクトを開始しました。

岡山ガス × 三菱オートリース × アークエルテクノロジーズ EV導入ワンストップサービス事業を開始 - 3社の強みを活かした協業事業 -

この3社協業事業の中で、岡山ガス株式会社では社用車のEV化にも取り組んでいます。

課題:「日々の事業運用に支障の出ないようなEVスマート充電」と「特定の社用車は充電の開始と停止を自由に実施するが充電時間や充電量kWhは個別に把握したい」という2つのニーズの同時達成

社用車の中には使用目的によって、充電時間帯を一律に設定できない車両も存在します。そうした車両では、自由な充電時間の確保と充電管理の両立が求められるため、EVスマート充電の対象車両とは異なる充電制御が必要となりました。

解決策:充電器ごとに充電制御の内容を分割。「AAKEL eFleet」と「AAKEL eFleet Billing」を充電器ごとに設定

  • 「日々の事業運用に支障の出ないようなEVスマート充電」は「AAKEL eFleet」で提供

  • 「特定の社用車は充電の開始と停止を自由に実施するが充電時間や充電量kWhは個別に把握したい」は「AAKEL eFleet Billing」で提供

充電器ごとに設定機能を変えて提供することで、1拠点内の複数充電器であっても、異なる制御と管理をすることが可能となります。

この「AAKEL eFleet Billing」は公共充電(一般的な目的地充電や経路充電)のサービスではないため、

  • 従業員への福利厚生としての充電サービス提供

  • 既存顧客訪問者への充電サービス提供

  • 既存取引先訪問者への充電サービス提供

このような細かいニーズにも対応することが可能です。

「AAKEL eFleet ver.1.1 」リリース ~eFleet Billing の提供開始〜 EV充電料金を計算し、サービス事業者に提供

また、車両データを活用したスマート充電で、物流現場の脱炭素化と運用コスト最適化を支援するため、トナミ運輸株式会社の相模支店にAAKEL eFleetの提供を開始しました。

トナミ運輸 相模支店にEVスマート充電・運行管理システム「AAKEL eFleet」を提供開始

この取り組みでは、軽EVの動態および充電データを蓄積・活用し、電力市場価格や施設の電力制約を考慮した自動充電制御によって、EV車両全体の運用効率化と電力コスト最適化を目指していきます。

「AAKEL eFleet」は、バス・タクシー・トラック・社用車・営業車などの法人向け基礎充電において、多様な運用ニーズやEV導入・運用に関するさまざまなお困りごとに対応しています。

▶ サービス詳細【AAKEL eFleet

また、アークエル株式会社では、エネルギー会社、自動車関連会社、公共交通事業者、その他の法人に対して、EV関連の新規事業構築支援をご提供してまいりました。

このトータルソリューションとコンサルティングにより、バス・タクシー・トラックなどの商用車から社用車まで、EVに関連する幅広い法人のニーズにお応えしています。

さらに、アークエル株式会社では電力分野に関する豊富な知見を有しており、さまざまな課題に対して最適なソリューションを提案することが可能です。こうした知見と海外ネットワークを活かし、モビリティ領域における調査・コンサルティングサービスを提供しています。

  • 自社の製品・技術が海外のEV市場でどのような事業機会を持つのか知りたい

  • 社内向けに簡潔で分かりやすいEV調査レポートを作成してほしい

  • 日本におけるEV関連の新規事業開発を検討したい

[EV Consultingサービスはこちら]

◼︎AAKEL eFleet

アークエルが提供するEVスマート充電サービス「AAKEL eFleet」は、海外製EV(乗用車/商用車)や充電器(ABB社)にも対応するベンダーフリーのソリューションです。API連携や車載器の活用により、メーカーや車種を問わず車両を一元管理できるほか、OCPP・ECHONET Lite・各充電器メーカーの独自仕様にも対応しています。これにより、普通充電器・急速充電器・V2Xなど異なるメーカーや方式の設備が同一拠点に混在しても、支障なく運用できる統合的な充電器管理を実現します。

◼︎EV導入に関するご相談窓口

EV導入やEVスマート充電やEV関連事業に関するお悩み・ご相談がありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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