「工場の電気代が高いけれど、どの設備に原因があるのか分からない」「コンプレッサーは止められない設備だから、省エネの対象外だと思っていた」――製造業の現場から、こうした声をよくお聞きします。
圧縮空気をつくるコンプレッサーは、多くの工場で電力消費の大きな割合を占める設備です。
一方で、エア漏れや設定圧力、設置環境といった運用面のムダが積み重なりやすく、実際の省エネ診断の現場でも「費用をかけずに大きく削減できる」代表的な設備です。
今回は、診断員がコンプレッサーで実際に確認している5つのポイントを解説します。
診断の出発点は、コンプレッサー本体の銘板です。
型番・出力(kW)・製造年・設定圧力を写真に撮って記録し、台数や配置、インバータの有無などの制御方式もあわせて確認します。
このとき必ず聞くのが「導入時から設定圧力を変えたことがあるか」です。設置以来一度も見直されていないケースは多く、それ自体が改善余地のサインになります。
また、食品工場に多いオイルフリー型は取れる対策に制約があるため、機種の種類も押さえておきます。
次に、どの時間帯に何台が動いているかという運転パターンをヒアリングします。コンプレッサーの消費電力量は「出力×負荷率×運転時間×稼働日数」で試算するため、運転時間の把握が提案の精度を左右します。
負荷率とは、定格出力に対して実際にどの程度の力で動いているかの割合です。たとえば37kWのコンプレッサーが負荷率70%で1日8時間・年250日稼働していれば、年間の消費電力量は約5.2万kWhになります。
コンプレッサーの省エネで最初に取り組みたいのが、エア漏れと不要時のエア供給の解消です。
配管の継ぎ目やホースの劣化部からの漏れは、休日など設備が止まっている時間帯に、コンプレッサーの音や圧力の変化で気づけることがあります。
意外な盲点が空気タンクで、バルブが完全に閉まっておらず、そこから漏れているケースもあります。
見落とされやすいのが、使っていないのに空気が流れ続けている状態です。ある工場では、自動ロボットの吸着工程で「朝の電源投入後、しばらく作業がないのにエアが出しっぱなし」というムダが見つかり、工場全体で是正しました。
コンプレッサーは、設定圧力を高くするほど多くの電力を消費します。
一般的な設定は0.6〜0.7MPaですが、末端の機器で実際に必要な圧力は約0.45MPa程度であることが多く、ここに引き下げの余地があります。目安として、設定圧力を0.1MPa下げると約4〜5%の省エネが見込めます。
ただし、実際の削減率は機種によって異なるため、メーカーの性能グラフで確認することが大切です。末端の必要圧力を確認しながら、段階的に下げていくのが安全な進め方です。
ある工場では、37kWのコンプレッサー2台(負荷率70%・年間3,000時間稼働)の吐出圧力を0.7MPaから0.6MPaへ引き下げました。この機種の性能グラフでは動力が約10%下がるため、削減電力量は年間15,540kWh、削減金額は約31万円(電力単価20円/kWh)です。設備投資を伴わない、設定変更だけで得られる成果です。
コンプレッサーは、吸い込む空気の状態によって効率が変わります。まず確認したいのが吸込フィルターの汚れです。油汚れなどで目詰まりすると吸込抵抗が増え、その分だけ余計な電力を使うため、清掃・交換が必要です。
もう一つがコンプレッサー室の温度です。コンプレッサーは自らの排熱で室温を上げてしまうため、換気が不十分な部屋では40℃を超え、夏場には50℃に達することもあります。
熱気ではなく外気を吸わせるだけでも効率は改善します。
吸気口(ガラリ)の設置と排熱ダクト工事で室温を50℃から25℃程度まで下げられれば約2%の省エネとなり、150kWクラスの大型コンプレッサー(負荷率70%、年間約21万kWh)なら4,200kWh、電力単価20円/kWhで約8.4万円の削減になります。
工事費は20万円以下が目安で、機器の寿命延長にもつながります。

運用改善の次に検討するのが、制御方式の見直しと設備更新です。たとえば1980年代製の150kWコンプレッサーを、75kW×2台の構成に更新するケースを考えます。
制御方式には大きく2つの選択肢があります。運転パターンが明確で、時間帯によって必要な空気量がはっきりしている工場では、不要な時間帯に1台を止める台数制御が有効です。
たとえば午後の4時間、1台を停止できれば、年間30万kWhが22.5万kWhとなり、7.5万kWhの削減になります。一方、空気の使用量が細かく変動する工場では、回転数で出力を調整するインバータ制御が向いています。
どちらを選ぶかは、着眼点①で把握した運転パターン次第です。
なお、インバータの効果は「消費電力は回転数の3乗に比例する」という理論で説明されますが、実際には機器の効率を考慮して2〜2.5乗程度で見積もるのが実務の目安です。過大な期待につながらないよう安全側で試算することに加え、インバータは故障時の影響が大きいため、バックアップ体制もあわせて検討しておくと安心です。
もっとも多いのは、いきなり設備更新から検討してしまうことです。エア漏れや高すぎる設定圧力を放置したまま新しい機器に替えても、ムダな空気を効率よくつくり続けることになりかねません。
また、担当者だけで改善を進めると現場に定着しにくいため、各部門を巻き込んだ省エネ委員会のような形で取り組むと、継続的な改善につながりやすくなります。
コンプレッサーの省エネは、漏れを止め、圧力を下げ、環境を整えるという運用改善だけでも大きな成果が期待できます。
エア漏れ対策や圧力設定の見直しは費用をほとんどかけずに着手でき、本体の更新は補助金の活用も含めて計画的に検討するのがおすすめです。
まずは自社のコンプレッサーの銘板と設定圧力を確認するところから始めてみてください。
アークエル株式会社では、コンプレッサーをはじめとする工場設備の省エネ診断から、運用改善・設備更新の提案、補助金活用まで一貫してサポートしています。
「うちのコンプレッサーにどれくらいムダがあるか知りたい」というご相談でも構いません。
ご興味がありましたら、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。