工場のボイラー・蒸気配管では、バルブや継ぎ目からの小さな蒸気漏れがそのままになっていることが少なくありません。生産に支障がないため、つい後回しにされがちです。また、スチームトラップは壊れたら交換というケースがほとんどです。
蒸気設備は稼働時間が長く、小さなムダでも年間では大きな損失になります。しかし実際の省エネ診断の現場では、少額の補修で年間数十万円単位の削減につながる箇所が数多く見つかります。今回は、診断員が蒸気設備で実際に確認している4つのポイントを解説します。
蒸気配管の小さな漏れは「少しだから」と放置されがちですが、金額に直すと印象が変わります。
たとえば蒸気圧0.5MPaの配管に直径1mmの穴があると、1時間あたり約6.6kgの蒸気が漏れます。
年間2,500時間稼働・蒸気単価1.2円/kgで計算すると、1カ所で年間約2万円の損失です。
さらに、漏れ量は穴の面積に比例するため、穴の直径が2倍になると損失は約4倍に膨らみます。
漏れが10カ所あれば、年間20万円以上が蒸気として消えている計算です。
なお、蒸気単価は燃料の種類や価格によって大きく変わるため、自社の単価で計算し直すことをおすすめします。
現場では漏れ箇所を写真に撮って「漏れマップ」を作り、損失の大きい箇所から補修の優先順位をつけていきます。
スチームトラップは、蒸気配管内に溜まった凝縮水(ドレン)を自動で排出する装置です。故障すると、次のどちらかの状態になります。
蒸気がそのまま外に出続ける「吹きっぱなし」
ドレンが詰まって加熱効率が落ちる「閉塞」

特に吹きっぱなしの損失は大きくなります。
たとえば24時間稼働に近い工場(蒸気圧0.4MPa・年間8,000時間稼働・蒸気単価5,000円/トン)で試算すると、軽微な漏れ(10kg/時程度)でも年間約40万円、完全に吹きっぱなしの状態(30kg/時程度)では約120万円に達します。
1台1〜3万円程度の交換費用と比べれば、費用対効果は明らかです。
ところが実際の現場では、「何台あるか把握していない」「壊れてから交換している」というケースがほとんどです。
スチームトラップは消耗品と位置づけ、3〜5年を目安とした定期交換のルールを作ることをおすすめします。
蒸気配管は、保温されていないと熱がどんどん逃げていきます。特に注意したいのは次の2カ所です。
フランジ(配管の継ぎ目):メンテナンスで保温材を外した後、再保温が忘れられがちです。
バルブ:もともと保温されていないことが多い箇所です。
また、保温材が雨水などで濡れていると、保温がない状態よりも熱損失が大きくなります。濡れた保温材は早めに交換が必要です。
あわせて確認したいのが、ボイラーの空気比です。燃焼に使う空気が多すぎると、余った空気が熱を持ったまま排出され、燃料のロスになります。
点検記録の排ガス酸素濃度から空気比を確認しましょう。適正範囲は空気比1.2〜1.3(酸素濃度3〜5%程度)です。
これを超えた状態が続いていれば、保守業者による燃焼調整を検討します。
もっとも多いのは「壊れてから直す」という対応です。スチームトラップや保温材は、目に見える故障が起きる前から少しずつ損失を生んでいます。
漏れや保温の欠損を「いつものこと」として見慣れてしまうことも、対策が後回しになる原因です。
蒸気設備のムダは目立ちにくい一方で、漏れの補修、トラップの定期交換、保温の補修、燃焼調整など、低コストで確実に効果が出る対策が揃っている分野です。
まずは自社の蒸気配管を一周して、漏れや保温の状態を確認するところから始めてみてください。
アークエル株式会社では、電気だけでなく蒸気設備まで含めた省エネ診断を行い、損失額の試算から改善提案まで一貫してサポートしています。
ご興味がありましたら、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。