「省エネ診断を受けると、結局のところ何が手元に残るのか」──こう尋ねられることがあります。報告書をもらって終わり、ではないか。そんな不安です。
前回は、自己流の省エネには限界があり、まずは専門家による省エネ診断でムダを正しく把握することが第一歩だとお伝えしました。今回は、その診断を受けると具体的に何が分かるのか──とりわけ「どの設備を更新すべきか」が、どう見えてくるのかを掘り下げます。
省エネ診断を受けると、報告書というかたちで大きく4つの情報が手に入ります。

図1:省エネ診断でわかる4つのこと
①エネルギーの使われ方
どの設備が、いつ、どれだけのエネルギーを使っているかが数字で示されます。
②ムダの所在
エア漏れ、ボイラーの空気の入れすぎ、過剰な運転、保温不足など、どこにムダが生じているかが特定されます。
③施策ごとの数字
それぞれの改善策について、年間削減額・必要な投資額・回収年数(投資額÷年間削減額)が整理されます。
④優先順位
どの対策から手をつければ効果が大きいか、順番が分かります。
この4点セットは、そのまま社内説明・稟議の根拠資料になります。「なんとなく古いから」ではなく「年間◯◯万円のムダがあり、◯年で回収できる」と数字で語れるようになる──ここが診断の最大の価値です。
4つのうち、設備更新を考えるうえで特に重要なのが、③施策ごとの数字です。
診断報告書には、ムダ・ロスの大きい設備から順に、改善のインパクトが金額で並びます。
これは言い換えれば、「どの設備を優先して更新すべきか」が、感覚ではなく数字で示されるということです。
たとえば「空調が古いから替えたい」と考えていても、診断を受けてみると、実は空調よりボイラーや圧縮空気系統のムダのほうが大きい、というケースは珍しくありません。
限られた投資予算を、いちばん効果の大きい設備に振り向ける──そのための優先順位が手に入ります。経営層に投資を説明するときも、「効果の大きい順に並べた根拠」があれば、稟議は格段に通しやすくなります。
なかでも受変電設備(変圧器や高圧受電設備まわり)は、日常業務のなかではほとんど意識されず、社内の目視点検だけでは劣化や損失に気づきにくい設備の代表格です。
負荷率が低いまま古い変圧器を使い続けているなど、専門家の診断で初めて「ここにムダがある」と分かるケースも少なくありません。空調やボイラーのように使用感で劣化を実感できる設備と違い、受変電設備は専門的な計測・分析なしには実態が見えない──だからこそ、診断の価値がとりわけ生きる領域だといえます。
さらに見逃せないのが、同じ「空調」という括りの中にも、性質のまったく異なる投資が混ざっているという点です。実際の公開事例で見てみましょう。
あるリハビリテーション病院の省エネ診断では、空調まわりのムダに対して2つの対策が試算されました。ひとつは、老朽化が進んだ空調機16台を高効率の機種に丸ごと更新する案。
投資約5,016万円に対して年間削減は約148万円、回収には33.8年かかる計算です。もうひとつは、換気量を自動調整するセンサを設置して、外気の取り入れすぎを抑える案。投資約219万円で年間約33万円の削減、回収6.7年でした。

図2:同じ施設の診断で見つかった、2つの「空調」の対策の差
この2つは、同じ「空調」という括りではありますが、実は解決している課題が違います。空調機の更新は老朽化への対応(いずれ避けて通れない設備投資)であり、センサ設置は運用面のムダ(過剰な外気取り込み)の是正です。
一方を選んで終わりにするのではなく、投資効率の異なるこの2つを組み合わせて実施することも、十分に検討する余地があります。
ここで大事なのは、「どちらを選ぶか」ではなく「どちらを先に着手するか」です。回収6.7年のセンサ設置は投資効率が高く、早期に着手する価値があります。
一方、回収33.8年の空調機更新は投資額・回収年数ともに大きいため、老朽化の進行度や補助金の活用可能性を踏まえて、時期を見極めながら計画的に進める投資です。診断があれば、この同じ「空調」に存在する、性質の異なる2つの投資を切り分けて、優先順位つきの実行計画に落とし込めます。
ここで誤解してほしくないのは、空調を更新すること自体が悪いわけではありません。設備の老朽化が進めば、いずれ入れ替えは必要になります。
診断の価値は、「これしかない」と一つの案に飛びつくのではなく、性質の異なる複数の投資を並べて、どちらから・どのタイミングで着手すべきかを、金額と回収年数つきで判断できるようにすることにあります。
診断で優先順位が見えたら、あとは順番に実行するだけです。進め方は、投資の小さいものから大きいものへと段階を踏むのが基本です。

図3:診断から実行までの段階
まず手をつけるのは、投資ゼロ・少額でできる運用改善です。
設備の設定の見直し、稼働ルールの変更、エア漏れの補修など、即効性があってリスクのない打ち手から始めます。
あわせて見落とされがちなのが、電力契約・料金メニューの見直しです。
自社の電力の使い方に合わない契約のままになっているケースは多く、診断で使われ方が見える化されると、契約面のムダも検討の土台に乗ります。
これらは設備を買い替えずにコストを下げられる打ち手です。
そのうえで、運用改善では取り切れない大きなムダ──老朽化したボイラー、効率の落ちた空調、制御のないポンプなど──を、設備更新で解決します。
ここで初期費用のハードルを下げてくれるのが、次回扱う設備更新の補助金です。
省エネ診断で手に入るのは「①使われ方の見える化 ②ムダの所在 ③施策ごとの削減額・投資額・回収年数 ④優先順位」の4点
ムダ・ロスの大きい設備から順に金額で並ぶため、「更新すべき設備」が数字で分かる
同じ「空調のムダ対策」でも、ある病院の事例では回収6.7年と33.8年。比較対象を持つことで、筋の良い投資を選べる
進め方は、運用改善(電力契約の見直しを含む)→ 設備更新の順。設備更新の初期費用は補助金で抑えられる
省エネ診断は、報告書をもらって終わるものではありません。
どこに、いくらのムダがあり、どの順番で手を打てば最も得かを示す「投資の地図」です。
次回は、その地図にしたがって設備を更新するとき、初期費用を大きく抑えてくれる「設備更新の補助金」を、国と自治体の2つのルートで詳しく整理します。
「どの設備を更新すれば効果が大きいか」、数字で確かめてみませんか。
「診断を受けてみたい」はもちろん、「自社のどこにムダがあるか知りたい」という段階からご相談いただけます。
アークエル株式会社は、補助金を活用した省エネ診断(ウォークスルー診断/IT診断)から、診断後の改善施策のご提案・補助金申請のサポート・設備更新後の効果検証まで、一気通貫でご支援します。
特定のメーカーやエネルギー会社に依存しない中立的な立場で、御社の状況に合った無理のないコスト削減をご提案します。
無料相談を受け付けています。お問い合わせフォームから「エネルギーコストを削減したい」を選び、お気軽にご相談ください。
省エネ診断事例・病院|省エネ・節電ポータルサイト(省エネルギーセンター)
省エネ診断|設備を診断して光熱費削減 省エネ診断ポータルサイト
※本記事中の事例は、省エネ・節電ポータルサイト(省エネルギーセンター)で公開されている実際の省エネ診断事例をもとに、社名を伏せてご紹介しています。削減額・回収年数は診断時の提案ベースの試算値であり、効果は設備の仕様・稼働状況・建物構造等によって異なります。
第一回目:なぜ電気代は下がらないのか──まず省エネ診断から始める
第二回目:省エネ診断で何が分かるのか──更新すべき設備が見えてくる(本記事)
第三回目:診断で見つかった設備を、補助金で更新する──初期費用を抑えるコツ(近日公開予定)
第四回目:補助金には期限がある──動くなら今、準備の進め方(近日公開予定)