エネチェンジ主催のJEC(Japan Energy Challenge 2019)にアドバイザー参加後にアイスランドを訪問しました。思いもかけず、そこで地球温暖化、そして脱炭素化について随分と考えさせられましたので、レポートします。

<氷河ボートツアー参加時の写真>
アイスランドは人口約32万人、面積は北海道の約1.3倍の広さの国です。首都のレイキャビックは北緯63度で、世界で最も北にある街として知られています。8月上旬の訪問でしたが、最高気温が12度で現地でダウンジャケットとニット帽を調達しました。北極からの風の影響で例年より寒いとのこと。火山が多く、国全体が火山岩と氷河でできている印象を受けました。
アイスランドの電力は約75%が水力、残りの25%が地熱で、電力についてはほぼ100%低炭素電源で賄われています。現在、暖房は熱利用がほとんどで、地熱のお湯が使われています。電力の70%以上は基幹産業のアルミニウム工場に使われているとのことで、アルミニウム工場建設のために環境破壊につながる水力発電所の建設は長い論争があったとのことです。今回の訪問の初日はスヴァルスエインギ地熱発電所で使われた熱水の排水を利用したブルーラグーンという有名な温泉施設でした。日本では地熱発電所の建設と温泉組合との間で折り合いが尽きませんが、アイスランドではWin-Winの関係で共存しているのを見て、やり方次第だなと感じました。


<スヴァルスエインギ地熱発電所と周辺にできたラグーン>

<ラグーンを利用して作られた温泉施設>
首都のレイキャビック市は2040年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げました。前述のように電力と熱はすでに温室効果ガスを排出しないので、交通分野で使われる石油が温室効果排出の大部分を占めています。市の計画では、2030年までに公共交通の比率と市民の徒歩及び自転車移動の比率を上げる事が謳われているようです。オランダのアムステルダムでもそうでしたが、自転車移動の充実は脱炭素化に向けた1つの有効な手段であり、日本(特に都市部)でも検討すべき政策だと感じています。また、オランダやフィンランド程のスピードではないものの車の電化も徐々に進んでいるようで、大きな駐車場ではEVチャージャーも見かけました。EVはBMWのi3と日産リーフで、TESLAは目にしませんでした。

<氷河ツアーが行われるアイスランド南部の駐車場にあったEVチャージャー>

<レイキャビック市内のバスステーションの駐車場にあったEVチャージャー>
面白かったのが、レイキャビックのいくつかの家や観光地で見かけた、芝生の屋根の家です。Laufás(芝生の家)と言うそうで、ファッションではなく、断熱効果を高めるために伝統的にそうしているとの事。これを見てシリコンバレーのFacebookの本社を思い出しました。断熱目的ではありませんが、メンローパークのFacebookの新社屋も屋上に植物が植えられています。

<レイキャビック市内のオシャレなカフェ>

<スナイフェルスネス半島のレストラン>
アイスランド南部にあるヨークルスアゥルロゥン氷河湖の氷河をボートで見てきました。バスで通った広大な氷河と氷河湖に浮かんでいる氷河は圧巻でしたが丁度この8月18日にボルガルフィヨルズルという場所で「元氷河の碑」の除幕式が行われるとの事。Rice大学の研究者達によってアイスランドで最初に失われた氷河「Okjökull」を忘れないために碑を設置するとのこと。アイスランドでは温暖化により毎年40平方キロメートルもの氷河が失われ、200年後には氷河が全くなくなると予想されています。前述のようにアイスランドで脱炭素化の取り組みが進められる背景もよく理解できるわけです。氷河を案内してくれたガイドも失われつつある氷河について長い時間をかけて解説していました。

<氷河湖を進むツアーのボート>

<氷河湖に浮かんでいる大きな氷河群>

<山の上の氷河>

<ボート上で配られた氷河。5分くらいで溶けてしまいました。>
アイスランドでは溶けだす氷河を目の当たりにし、一方で地熱発電所の排水でできた温泉に浸かるという貴重な体験をしました。猛暑の日本から一瞬の涼を得たアイスランドへの旅でしたが、地球温暖化と脱炭素化の取り組みについて深く考えさせられる時間となりました。
文責:アークエルテクノロジーズCEO 宮脇 良二