2025年9月、国際的なロジスティクス企業であるFedExは、オーストラリアにおいてEVトラック導入に向けた環境整備が進んだことを受け、本格的なEVトラックの導入を開始しました。
ラストマイル配送を担うPUD※車両向けに、三菱ふそうトラック・バスの「eCanter」およびメルセデス・ベンツの「eSprinter」を含む、計55台のEVトラックを配備しています。
eCanterは年間30,000km走行した場合、従来のディーゼルトラックと比較して最大13.2トンのCO₂排出削減が可能とされています。また、eSprinterは年間85,000〜100,000kmの走行を想定した場合、最大8.5トンのCO₂削減が見込まれています。
導入はまず南オーストラリア州のアデレードで開始され、その後、メルボルン、シドニー、ブリスベンなどの主要都市へと順次展開される予定です。
※ PUD(Parcel Pickup and Delivery):顧客からの集荷およびラストマイル配送を担うFedExの配送車両。日常的に高頻度で運行される。
FedEx オーストラリアにおけるEVトラック導入は、同国での「制度整備」や「インフラ面での進展」によって後押しされました。
制度整備:EV向け税制優遇
制度面での代表的な施策が、2022年に開始されたNEVS(オーストラリア国家電気自動車戦略)の一環である「Electric Car Discount」です。これは、雇用主が従業員に提供する対象EVについて、福利厚生税(FBT)を免除する制度です。
以下のすべての条件を満たす場合、FBTは課税されません。
車両がゼロエミッション車または低排出ガス車であること
2022年7月1日以降に初めて所有・使用された車両であること
現在の従業員、またはその家族などの関係者が使用していること
輸入または販売時に贅沢品税(LCT)が課税されていないこと
また、給与パッケージ制度のもとで提供される福利厚生も、この免税措置の対象に含まれます。さらに、EVに対する輸入関税はゼロに設定されているため、生産国を問わずEVを導入できる環境が整っています。
インフラ面での進展:EVトラック専用充電ハブ
インフラ面では、2025年にARENA(オーストラリア再生可能エネルギー庁)が、メルボルンにおけるEVトラック専用充電ハブの開発・建設・運用を支援すると発表しました。これは、EVトラック専用充電施設としてはオーストラリア初のプロジェクトです。
本プロジェクトには1,230万米ドルが拠出され、トラックのEV化における技術的および商業的な実現可能性を示すことを目的としています。
FedExは、こうした制度整備とインフラの進展を背景に、オーストラリアを自社のEV化戦略に組み込むことが可能となりました。同社は2040年までに、世界全体のPUD車両をEV化し、グローバル事業全体でカーボンニュートラルな運用を達成することを目標としています。
FedExは2009年に独自プログラム「EarthSmart」を立ち上げ、環境負荷低減の取り組みを段階的に拡大してきました。「EarthSmart」は、ビジネス、カルチャー、コミュニティの3領域を対象とし、航空機、トラック、施設など、サービスに関わる物理的資産全体をカバーしています。
EVの導入は、以下のように世界各地で進められてきました。
FY10※:アメリカ(初導入)、フランス
FY13:香港
FY14:ブラジル
FY16:日本
FY18:中国
FY23:インド
FY24:イギリス、アラブ首長国連邦(UAE)、カナダ、南アフリカ
FY25:韓国、ニュージーランド、オーストラリア
※ FedEx FY:6月〜翌年5月
FedExは、オーストラリア導入以前に13の国・地域でEVを導入してきた経験を通じて、共通する課題を整理し、それらを踏まえてオーストラリアでの導入を進めてきました。
主な課題は以下のとおりです。
充電インフラの整備
物理的スペースや電力設備の確保が不可欠であり、公共充電インフラ企業や自治体など、関係者との連携が求められる。
現地パートナーシップの構築
車両メーカー、充電器メーカー、電力会社、電気工事会社など、EV導入を共に推進できるパートナーとの関係構築が重要。
長期的視点での事業構築
EV導入は単発の取引ではなく、複数分野が関わる段階的なプロセスとなるため、その前提に立った事業設計が必要。

出典:FedExのデータを基にアークエル株式会社作成
FY10にはわずか43台だったFedExのEV導入台数は、FY22には3,552台まで増加しました。さらにFY23には7,136台と前年から倍増し、FY24には8,000台を超える規模にまで拡大しています。
将来的な目標として、FedExはPUD車両の完全なEV化を掲げています。2030年までにFedExが新たに購入するすべてのPUD車両をEVに限定し、2040年までには契約輸送を含むすべてのPUD車両をEVへ移行することを目標としています。
日本におけるFedExのEV導入は、2016年2月に始まりました。東京都内での集荷・配達業務を対象に、日産自動車の「e-NV200」2台が新砂ステーションに導入されています。
その後、2024年10月には三菱ふそうトラック・バスの「eCanter」3台を追加導入しました。eCanterは1回の充電で最大約116kmの走行が可能で、実際の配送ルートをもとにした試算では、ディーゼル車と比較して1台あたり年間約3.3トンの排出ガス削減効果が見込まれています。
FedExは、日本においてもEV導入を着実に進めています。
アークエル株式会社では、物流部門におけるEVトラック導入支援の一環として、グリーンコープ生活協同組合くまもと様への支援を行っています。
▶ 参考リリース
【EVトラックの最適充電マネジメントシステムのサービス提供を開始
グリーンコープくまもと × アークエルテクノロジーズ】
課題:EVトラック導入に伴う電気設備コスト
グリーンコープ生活協同組合くまもと様の西部センターでは、EVトラック導入にあたり、当初は新設キュービクルの設置が必要と検討されていました。
しかし、新設キュービクルの導入には数千万円規模の費用が見込まれており、導入コストが大きな課題となっていました。
解決策:既存設備を活かした事前シミュレーション
そこでアークエル株式会社では、「既存電気設備の最大限活用」と「新規電気設備の最適化・最小化」を目的とした事前シミュレーションを実施し、以下の提案を行いました。
既設キュービクルの設備容量内でEV充電を制御するEV充電マネジメントシステム「AAKEL eFleet」の適用
新設キュービクルが不要となる設備構成の実現
これらの提案をご採用いただき、大規模な設備投資を回避しながらEVトラック導入を実現しています。
アークエル株式会社では、EVトラックや充電器の選定に加え、電気設備を含めた総合的な検討が可能です。電気設備まで踏み込んだ検討を行うことで、EV導入にかかる初期費用の削減が可能となり、削減できたコストをEVトラックの追加購入に充てるといった柔軟な導入計画も実現できます。
また、車載器の設置やAPI連携ができないEVトラックであっても、SoC(充電残量)予測モデルを生成することで、異なるEVトラックメーカーの車両を一元管理できるソリューション「AAKEL eFleet」を提供しています。これにより、お客様は特定のメーカーに縛られることなく、自由にEVトラックを選択することが可能となります。
「AAKEL eFleet」は、バス・タクシー・トラック・社有車・営業車などの法人向け基礎充電において、多様な運用ニーズやEV導入・運用に関するさまざまなお困りごとに対応しています。
▶ サービス詳細
【AAKEL eFleet】
また、アークエル株式会社は電力分野に関する豊富な知見を有しており、さまざまな課題に対して最適なソリューションを提案することが可能です。こうした知見と海外ネットワークを活かし、モビリティ領域における調査・コンサルティングサービスを提供しています。
自社の製品・技術が海外のEV市場でどのような事業機会を持つのか知りたい
社内向けに簡潔で分かりやすいEV調査レポートを作成してほしい
日本におけるEV関連の新規事業開発を検討したい
アークエルが提供するEVスマート充電サービス「AAKEL eFleet」は、海外製EV(乗用車/商用車)や充電器(ABB社)にも対応するベンダーフリーのソリューションです。API連携や車載器の活用により、メーカーや車種を問わず車両を一元管理できるほか、OCPP・ECHONET Lite・各充電器メーカーの独自仕様にも対応しています。
これにより、普通充電器・急速充電器・V2Xなど異なるメーカーや方式の設備が同一拠点に混在しても、支障なく運用できる統合的な充電器管理を実現します。

EV導入やEVスマート充電やEV関連事業に関するお悩み・ご相談がありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。