デンマークの有償旅客輸送は、2018年のタクシー事業法(Taxiloven)によって規制されています。本法は2013年に制定されたタクシー輸送法(Lov om taxikørsel)に代わるものです。これまでのタクシー免許は自治体ごとに発行・制限され、タクシー免許保有者は地域の配車センターへの加盟が義務付けられていました。また、免許取得にあたっては、居住要件、財務的信用力、業務遂行能力などの基準が定められていました。
2018年の改正で従来の自治体ごとのタクシー台数割当制度は廃止され、新たな技術的要件が導入されました。また、タクシー市場は明確に整理され、国や自治体がモニタリング可能な仕組みが整備されました。

出典:Retsinformationのデータベースをもとにアークエル株式会社が作成
その後、2020年に国家気候戦略である「道路輸送のグリーン転換に関する合意」(Grøn vejtransportaftale)が策定されました。この戦略はタクシーだけでなくライドシェアも含め、一般的なEVへの支援でEV移行を後押しする経済的環境を整備しています。
目標
2030年までにグリーン車両100万台
2030年までにCO2を210万トン削減
インセンティブ
25億デンマーククローネ(約550億円)の予算を確保
「道路輸送のグリーン転換に関する合意」を実際の法律・税制として具体化する主要な手段の一つが、自動車登録税法(Lov om Registreringsafgift)です。この法律は自動車登録税の計算方法を見直し、車両価格に加えて CO2 排出量をより反映する仕組みを導入するとともに、ゼロエミッション車両向けの控除や優遇措置も定めています。

出典:Retsinformationのデータベースをもとにアークエル株式会社が作成
2026年度予算案(Finansloven 2026)はEV導入支援や財源確保だけでなく、電力税の引き下げを通じてEV運用コスト低減も後押ししています。これによりタクシーを含む業務用車両にとっても、EV移行を進めやすい経済環境が整えられています。

出典:Retsinformationのデータベースをもとにアークエル株式会社が作成

出典:Statistics Denmarkのデータベースをもとにアークエル株式会社が作成
デンマークでは各種政策や支援策を背景に、EV(乗用車)が着実に増加しています。EV保有台数は2020年の7,137台から2025年には66,147台へと拡大しており、5年間で約9倍に増加しました。さらに、乗用車全体に占める電動車の比率も3.94%から34.81%まで上昇してます。こうした乗用車市場のEV環境変化は、タクシーを含む業務用車両のEV移行を後押しする土台にもなっています。
デンマークのEVの規制と支援の詳細については、当社の過去ブログ(デンマークEVシフト最新状況、税制支援とインフラが支えるEVバスの現場)を参照ください。
2013年にエストニアのタリンで創業したTaxifyが2019年にBoltにリブランドし、タクシーに限らないモビリティ全般への完全電動化を進めている会社です。Boltは欧州以外への展開とともに、電動キックスクーターシェアリング・フードデリバリーなどの事業拡大も進めています。
2025年3月にデンマークのEVタクシー会社Viggoを買収しデンマークの有料配車サービス市場に参入しました。Viggoは300台超のEVを運行しコペンハーゲン・オーフスで45万人のユーザーを持つ、スカンジナビア初の100%電動有料配車サービスです。
また、Boltは同日にTaxi 4×27との提携を発表しました。この提携により、Boltは600台超の車両をBoltプラットフォームに追加し、コペンハーゲン市場での車両を一気に拡充しました。

画像引用元:Bolt公式サイト
2013年2月、エストニアのタリンで創業したTaxify(2019年にBolt)は、わずか数人のチームが「もっと手頃で使いやすい配車サービスをつくる」という発想からスタートしました。当初は地元タクシー会社と提携する小さなサービスでしたが、翌2014年にはエストニア国内で利用を広げるとともに、早くも隣国ラトビアへ進出。創業からわずか1年余りで海外展開に踏み切るなど、当初からグローバル市場を見据えた成長戦略を描いていました。
その勢いは欧州以外にも拡大していきました。2016年には南アフリカ、ケニア、ナイジェリア、ウガンダ、タンザニア、ガーナといったアフリカ市場へ一気に進出し、新興国でのモビリティ需要を取り込みました。そして2017年には、欧州・アフリカ・中東を中心に20か国へ事業を拡大。配車サービスの世界では巨大企業がしのぎを削る中、Boltは独自の地域戦略で存在感を高めていきました。
Boltの特徴は、「有料配車サービス企業」で終わらなかったことです。2018年にはエストニアのタリンで電動キックスクーターのシェアリング事業を開始し、都市内の短距離移動という新たな市場へ参入。さらに2019年には社名をTaxifyからBoltへ変更し、ブランドをモビリティ全体へと進化させます。同年にはフードデリバリー事業もタリンで立ち上げ、その後バルト三国や南アフリカへ展開。人だけでなく「モノも運ぶ」プラットフォームへと進化していきました。
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大はBoltにも大きな打撃を与えました。有料配車サービス需要は急減し、売上は一時85%も減少しました。しかし、多くの企業が大規模な人員削減に踏み切る中、Boltはレイオフを避ける決断をします。その代わりにフードデリバリー事業を16か国へ急拡大し、需要の変化に合わせて事業ポートフォリオを転換。この柔軟な経営判断が、危機を乗り越える大きな原動力となりました。
コロナ禍を乗り越えたBoltは、2021年5月、タリンでフリーフローティング型(乗り捨て自由)カーシェアリング「Bolt Drive」を開始しました。これにより、ライドヘイリング・マイクロモビリティ・カーシェアリングという3つの移動手段を1つのアプリで提供する、欧州初の企業となりました。さらに同年12月には、電動スクーターと電動バイク13万台を欧州15か国45都市以上で展開し、欧州最大のマイクロモビリティ事業者へと成長し、2022年には欧州・アフリカの45か国超・400都市超へと足場を広げ、ユーザー数は1億人を突破しました。
成長を続ける中でBoltが次に見据えたのは環境への配慮でした。2023年、「Green」「Electric」「Tesla」といったEV専用ライドカテゴリーを欧州・アフリカの70都市超で導入。利用者はアプリ上でEVでの乗車を選択できるようになり、モビリティの脱炭素化を利用者自身が後押しできる仕組みを整えました。
そして2025年3月、Boltは創業以来初となるM&Aを実施し、デンマークのEVタクシー会社「Viggo」を買収。同時に現地タクシー会社「Taxi 4×27」とも提携し、デンマークの有料配車サービス市場へ本格参入しました。有料配車サービスだけでなく、マイクロモビリティ・カーシェアリング・フードデリバリー・EVモビリティまでを1つのプラットフォームで提供する、世界有数のモビリティ企業へと成長を遂げています。

画像引用元:Bolt公式サイト
有料配車サービス・フードデリバリー・マイクロモビリティ・カーシェアリングと、あらゆる移動手段を1つのアプリに統合してきたBoltが次に見据えるのは「ロボタクシー」です。「欧州の有料配車サービス企業の中で唯一、独立系企業として自律走行車両のスケールアップを牽引する」このような野心的なポジションを目指しています。
2025年11月、Boltは中国の自律走行テクノロジー企業Pony.aiと提携を発表しました。自律走行の「頭脳」となる技術力を持つ企業との連携は、Boltにとって自律走行事業への本格参入の第一歩でした。
その1か月後の2025年12月、Boltはフィアット・プジョー・オペルなどを傘下に持つ欧州自動車大手Stellantisと戦略的パートナーシップを締結しました。目的はレベル4自律走行車の開発と商用展開です。Pony.ai(技術)とStellantis(車両製造)とBolt(配車プラットフォーム)この3つの異なる強みを持つ企業が手を組んだことで、自律走行車両の実現に向けた体制を整えていきます。
そして2026年6月、Bolt・Pony.ai・Stellantisの3社は、ルクセンブルクで自律走行車両の実証パイロット「リビングラボ」の開始を正式に発表しました。この実証実験では、安全性・性能・規制適合性という3つの観点から徹底的な検証が行われ、プログラム終了時には完全無人走行の実現を目指すという内容です。
Boltのロードマップでは、2029年には量産開始を目標とし、2035年までにはBoltプラットフォーム上で10万台の自律走行車を展開するという目標を掲げています。
有料配車サービスという枠組みを越え、「移動そのものの再定義」にBoltは挑戦しています。
課題:ほとんどのドライバーは自宅での充電ができない。
対策:公共充電のコストを削減するために公共充電事業者(CPO)とパートナーシップを締結
公共充電事業者(CPO):Eleport、Electra、JB Charge、OK Q8、Shell、Repsol、EDP、など。
2019年、デンマークの首都コペンハーゲンで設立されたViggoは、当初から「グリーントランスポート」と「プレミアムユーザー体験」という明確なコンセプトを掲げていました。他の有料配車サービス企業が価格競争に走る中、Viggoは300台超という保有車両のすべてをEVで揃えるという、当時としては大胆な選択をし、「環境に配慮した上質な移動体験」というポジショニングで有料配車サービス市場に参入しました。
ViggoはEV運用する中で見えてきた「充電インフラ不足」という課題に対して、2021年に子会社Viggo Energyを設立し、都市部向けの公共型急速充電ハブ(300kW)の整備に参入しました。自社のEV運用を支えるための充電インフラを外部提供する事業へ成長させていきました。
2024年3月には、デンマークのEV充電管理ソフトウェア企業 Montaと提携。Montaが「バックエンドプロバイダー」としてソフトウェア基盤を提供することで、Viggo Energyは超急速充電ビジネスの国際展開を見据えた土台を築いていきました。そして同年7月には、デンマーク最大の通信会社TDC NETとの提携を発表しました。TDC NETが保有する5,000か所超という膨大な不動産やサイトネットワークを活用し、都市部から郊外まで、超急速充電ステーションを段階的に展開していく計画であり、通信インフラ企業との協業によって充電インフラを拡大しています。
2024年10月、Viggo Energyはブランド名を「Stella」へと刷新し、単なるリブランディングにとどまらず、デンマーク国内で培ってきた急速充電インフラのノウハウを元に、国外展開へ進めています。

画像引用元:Viggo プレスリリース
2025年3月、BoltによるViggoの買収が実施され、着実に事業基盤を固めてきたViggoに大きな転機が訪れました。
このM&AはBoltにとって初めてのM&Aでした。グリーンモビリティのパイオニアとして、有料配車サービスと充電インフラという2つの事業を持つまで成長したViggoは、Boltがデンマーク市場とEVインフラ事業へと足場を広げていく上で、大きな意味を持つM&Aとなりました。
Taxi 4×27は、1927年にデンマークのカストラップに設立されました。Taxi 4×27はデンマーク主要都市で広くタクシーサービスを展開してきました。Viggoのような新興EVスタートアップとは対照的に、Taxi 4×27が持つ最大の資産は「歴史」と「実績」であり、すでにライセンスを取得した数多くのタクシー車両とドライバーのネットワークです。この積み重ねてきた基盤が、Boltにとって重要な意味を持ちます。
2025年3月、BoltがViggoを「買収」した同日に、Taxi 4×27との「提携」も発表されました。Viggoの買収によって、BoltはEVを中心とした高品質な車両や運営ノウハウを獲得しました。一方で、Taxi 4×27との提携によって、すでにライセンスを取得している多数のタクシー車両を自社プラットフォームへ取り込むことが可能になりました。
この2つの施策は別々の取り組みではなく、Viggoが「質」を担い、Taxi 4×27が「量」を担うことで、Boltはデンマーク参入直後から十分な供給力を確保し、利用者に安定した有料配車サービスを提供できる体制を整え、お互いを補完する戦略でした。
新規に有料配車サービス市場へ参入する際、最大のハードルとなるのが「稼働できる車両とドライバーの確保」です。ライセンス取得には時間がかかり、一から車両網を構築するのは容易ではありません。Taxi 4×27という、すでにライセンスを持つ車両とドライバーの厚い基盤を持つパートナーと組むことで、Boltはこの立ち上げの壁を一気に乗り越えることができました。この2つの提携が補完関係にあることが、Boltがデンマークの有料配車サービス市場に参入するにあたっての戦略となっています。

画像引用元:Taxi 4×27 公式サイト
アークエル株式会社では、タクシーのEV移行に向けて
移行シミュレーション
EV車両・充電器導入
電気工事
補助金支援
充電最適化
まで、包括的なサポートを提供し、導入から運用まで一貫してご支援します。
特に、第一交通産業社には、充電器メーカーや普通充電器/急速充電器を問わない統合的な充電情報管理を提供し、2年以上の運用実績があります。
100拠点を超える営業所におけるEVタクシーのエネルギー料金管理がExcelへの手入力などで属人化し、営業所ごとに精度が異なり、本社での管理はかなりの手間になっていました。
OCPPに準拠した普通充電器/急速充電器だけに限らず、ECHONET Liteや充電器メーカーの独自仕様にも対応可能なベンダーフリーを「AAKEL eFleet」で実現し、「充電器ごと」に「EVタクシーごと」に充電量(kWh)を把握することが可能となります。
また、各営業所が契約している電気料金メニューを踏まえて「各営業所ごと」に充電単価(円/kWh)を設定することも可能です。
この充電量(kWh)と充電単価(円/kWh)を組み合わせて、正確なEVエネルギー料金算出することが「AAKEL eFleet」で可能となります。この仕組みにより、EV移行前の車両のガソリン代と比較することが容易となり、
事前のEV移行シミュレーションからどのくらい差があるのか
実際にはどのくらいのエネルギー料金が削減されているのか
などの把握も容易となります。
さらに、次のEVを導入する拠点の検討への活用も可能と想定しています。
同じ月間走行距離kmでも、エネルギー料金が低くなる拠点へのEV導入
エネルギー料金が低くなる電気料金メニューエリアへのEV集中導入
「AAKEL eFleet」は、バス・タクシー・トラック・社有車・営業車などの法人向け基礎充電において、多様な運用ニーズやEV導入・運用に関するさまざまなお困りごとに対応しています。
サービス詳細▶ AAKEL eFleet
また、アークエル株式会社では、エネルギー会社、自動車関連会社、公共交通事業者、その他の法人に対して、EV関連の新規事業構築支援をご提供してまいりました。
このトータルソリューションとコンサルティングにより、バス・タクシー・トラックなどの商用車から社有車まで、EVに関連する幅広い法人のニーズにお応えしています。
さらに、アークエル株式会社では電力分野に関する豊富な知見を有しており、さまざまな課題に対して最適なソリューションを提案することが可能です。こうした知見と海外ネットワークを活かし、モビリティ領域における調査・コンサルティングサービスを提供しています。
自社の製品・技術が海外のEV市場でどのような事業機会を持つのか知りたい
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アークエルが提供するEVスマート充電サービス「AAKEL eFleet」は、海外製EV(乗用車/商用車)や充電器(ABB社)にも対応するベンダーフリーのソリューションです。API連携や車載器の活用により、メーカーや車種を問わず車両を一元管理できるほか、OCPP・ECHONET Lite・各充電器メーカーの独自仕様にも対応しています。これにより、普通充電器・急速充電器・V2Xなど異なるメーカーや方式の設備が同一拠点に混在しても、支障なく運用できる統合的な充電器管理を実現します。

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