企業活動による温室効果ガス排出量(サプライチェーン排出量)は、Scope1(自社からの直接排出)、Scope2(電力・熱の使用による間接排出)、Scope3(サプライチェーンにおける他社の間接排出)の3つに分類されます。

Scope1は、工場プロセスや燃料の燃焼などに伴う事業者自らが直接排出するものであり、燃料購入記録などに基づいて比較的算定しやすい領域です。
特に、排出量の管理・削減の工夫が最も反映されやすいのはScope2です。電力使用に伴う排出は、再生可能エネルギーの導入や電力会社や契約メニューの見直し、非化石証書の活用など、企業の意思の努力によって排出量を削減することができます。とくにScope1の排出が少ない業種(例:サービス業、小売業、情報通信業など)では、Scope2が実質的に最も主要な排出源となるケースもあります。
さらにScope2には、「ロケーション基準」と「マーケット基準」という2つの算定アプローチがあり、同じ電力量を使っていても、どちらを採用するかで排出量の数値は大きく異なる可能性があります。 本記事では、このScope2に焦点を当て、「ロケーション基準」と「マーケット基準」の違いとその使い分け方を解説します。
ロケーション基準は、企業の所在地が属する電力系統網の平均排出係数を使用して、電力使用に伴うCO₂排出量を算出する方法です。
例えば、電気の使用が1,000kWhで、その地域の平均排出係数が0.0004t-CO₂/kWhであれば、排出量は0.4t-CO₂と計算されます。契約している電力会社や料金メニューに関係なく、地域全体の電力構成(火力・再エネなど)に基づいて算定される、より平均的で網羅的な排出状況を示す方法です。
マーケット基準は、企業が契約している電力会社や料金メニューに基づく排出係数を用いて算定します。
例えば、再エネ由来の電力プランを契約している場合、排出係数が非常に小さい、またはゼロに近い数値となる可能性があります。これは、「企業の脱炭素への取り組み(再エネ調達など)」を定量的に示すことができます。

出所:経済産業省・環境省「国際的な気候変動イニシアティブへの対応に関するガイダンス」
GHGプロトコル※1では、Scope2における「ロケーション基準」と「マーケット基準」の両方を併記(dual reporting)することが推奨されています。これにより、「地域インフラに対する排出影響」と「企業の選択による削減努力」の両面を可視化できるためです。特に、マーケット基準での排出量がロケーション基準よりも低くなる場合、その差分が企業の自主的な削減努力の成果を示す指標となります。
なお、CDP※2 もガイダンスに基づき、電力会社ごとの排出係数が利用可能な国・地域の場合は両方の基準で報告することを求めており、日本企業の場合は、両方の基準で回答していない場合はスコアが減点されます。
※1GHGプロトコルとは、温室効果ガス排出量の国際的な算定・報告基準で、企業の気候関連情報開示の基盤とされています。
※2CDPとは、企業や自治体に対して気候変動、水資源、森林など環境分野に関する情報開示を促進する国際的な非営利団体です。
ロケーション基準では温対法の全国平均係数を用いて算定します。複数の電力会社の電力メニューを契約していても、日本国内であれば係数は変わりません。図の事例の場合、全国のどの拠点でも全国平均係数の0.50(t-CO₂/MWh)を用います。
マーケット基準では環境省が算定・報告・公表制度で毎年公表する電気事業者別調整後排出係数(事業者全体または料金メニュー別係数)を用いて算定することが一般的です。図の事例の場合、契約している電力会社別または料金メニュー別の係数を用います。個別のメニュー別係数が公表されていない場合は「メニュー別係数(残差)」を用います。

Scope2排出量の算定は、単なる電力使用量の記録にとどまらず、企業の脱炭素戦略を定量化するための基盤です。ロケーション基準とマーケット基準の違いを理解することが、算定作業の精度を高めるとともに、社内外への透明性ある説明にもつながるため、排出量算定における基本かつ重要な視点として、ぜひ押さえておきたいポイントです。
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「AAKEL eCarbon」は、GHG(温室効果ガス)排出量の算定・可視化だけでなく、その次のステップとなる排出削減目標を達成するための具体的なアクションをご提案するサービスです。エネルギー使用量などのデータをもとに、Scope1・2の温室効果ガス排出量を自動で算定・集計・可視化が可能です。初めての排出量算定にも対応しやすい設計で、電力・燃料などの使用実績を入力するだけで排出量をすぐに把握することができます。
また、算定結果は部門別・拠点別などでの可視化にも対応しており、社内のエネルギー管理や中長期の削減目標づくりにも活用いただけます。CDPやSBT、TCFD、CSRDなど、今後の情報開示や非財務報告に備えた「最初の一歩」として、ご利用いただけます。
