排出削減目標は「評価されるもの」から「前提条件」へ

最終回

2026/5/18

※本記事では、日経MOOK『地域と歩むカーボンニュートラル経営』を読む際に、「どのポイントに目を向けるとよいか」「自社では何がポイントになりそうか」を考えるためのヒントを、ブログ形式でまとめています。本編とあわせてお読みいただくことで、内容をより身近に感じていただけます。

カーボンニュートラルへの対応は「先進的な企業の取り組み」ではなく「取引を継続するための最低条件」になりつつあります。そのなかで注目されているのが、SBT(Science Based Targets)です。SBTは、パリ協定が求める水準に対して、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標を企業が定め、要件を満たすことで国際的な機関がその妥当性を認定する制度です。一見すると大企業向けの制度に見えますが、実は今、中小企業にも急速に広がっています。その背景には、大手企業を起点としたサプライチェーン全体への圧力があります。対応を怠れば「環境配慮が不十分」とみなされ、取引から排除されるリスクが高まります。

ポイント① 中小企業でも取り組みやすくなっている

通常版のSBTは、スコープ1〜3すべての排出量を算定する必要があり、費用や工数の負担も大きく、中小企業にとってはハードルの高い制度でした。そこで導入されたのが「中小企業版SBT」です。

この制度では、

  • スコープ1・2は必須だが、スコープ3は任意

  • 費用が抑えられる

  • 認証までの期間も比較的短い

といった形で、より取り組みやすい設計となっています。中小企業版SBTは、リソースが限られる多くの地域企業にとって実行可能な取り組みとなっています。

出所:SMALL AND MEDIUM-SIZED ENTERPRISES(SMEs) FAQs(https://docs.sbtiservices.com/resources/FAQsforSMEs.pdf)より環境省作成https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SBT_syousai_Option2_20250929.pdf

ポイント② 取引先からの信用を高める

SBTは、企業の信用を高めると同時に、将来の取引リスク低減にもつながる戦略的な取り組みです。

SBT認証を取得することで、

  • 顧客や取引先からの信頼確保

  • 資金調達の優遇

  • 新規取引の機会創出

といった効果が期待できます。

特に重要なのが、サプライチェーンにおける評価です。大企業がカーボンニュートラルを進める中で、サプライヤーにも同様の対応が求められるようになり、その対応状況が取引に影響するケースも増えてきています。 こうした環境のなかで、SBTは自社の取り組みを客観的に示す共通言語として機能しています。SBT認証の取得は「環境問題に真剣に取り組む企業である」というメッセージとなり、社外への発信力を高めます。その結果、取引先からの評価向上や、サプライチェーン内のポジション強化にもつながります。

ポイント③ 企業姿勢を客観的に示すことができる

SBTは、認証の取得そのものがゴールではありません。実際の削減行動の裏付けを、国際基準で証明する仕組みです。

重要なのは、

  • 自社の排出量を把握しているか

  • 削減に向けた目標を策定しているか

  • 実際に行動しているか

といった企業姿勢です。

また、最初から完璧である必要はありません。まずは排出量を把握し、削減の方向性を示すだけでも、企業姿勢は明確に伝わります。中小企業版SBTは、地域企業が将来に向けて競争力を維持するための有効な選択肢といえます。

詳しく知りたい方は、日経MOOK『地域と歩むカーボンニュートラル経営』のPART5をご覧ください。

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